ツバキラボでは、CNC木工旋盤を導入いただいたお客様に、できるだけ現場のリアルな声を伺うようにしています。
今回は、岐阜県岐阜市にある株式会社紬葵(つむぎ)様。就労支援として障がいのある方も雇用し、木工旋盤・挽き物を中心に仕事をされている工房です。この度、株式会社紬葵様にCNC木工旋盤 TT535TSを導入させていただきました。
実は納入から1カ月もたたないときに再訪したのですが、すでに機械の周りは木くずであふれていました。それほど時間が経っていない段階でも、すでにCNC木工旋盤が現場に根付き、しっかり稼働していることに私たちは非常に驚きました。
なぜ紬葵様はCNC木工旋盤を導入したのか、そして導入後、何がどう変わったのか。どのようにして短期間で現場に定着できたのか、その背景と効果についてご紹介します。
導入前の課題|属人化と量産対応の限界に直面していた木工現場

紬葵様は、もともと職人による手加工を中心に、さまざまな業界からの依頼品を少人数でこなしてきた工房です。
しかし、仕事量が増えるにつれて、ある課題がはっきり見えてきたといいます。
竹内さんは、当時の状況をこう振り返ります。
「どうしても、作れる人が限られてしまうんですよね。技術職なので、誰でもすぐにできる仕事じゃない。万が一、その人が体調を崩したらどうするんだ、という不安はずっとありました」
いわゆる“属人化”の問題です。特定の職人の技術に依存している状態では、会社としてのリスクが大きい。さらに、扱うロット数も次第に増え、数百個から、案件によっては数千、万単位になることもありました。一人で何千個もつくると腕もパンパンになる。品質を保ちながら数をこなすのは大変だったと振り返ります。
“人に依存した体制”と“増え続ける量産案件”。
この2つが重なり、手加工中心のやり方では限界が見え始めていたのです。
なぜCNC木工旋盤を導入したのか|再現性と安定品質を実現するための設備投資
こうした状況の中で、紬葵さんが検討し始めたのがCNC木工旋盤の導入でした。
それは「会社として、仕事のやり方を変える必要がある」という代表の竹内さんの強い危機感がありました。
「今だけじゃなくて、これから先も続けていくことを考えると、属人化したままではいけないな、と。会社としては“このやり方なら誰でも一定のものが作れる”状態にしておいた方がいいと思ったんです」
これは、竹内さんが会社を立ち上げた根本的な理由に直結します。
竹内さんは個人事業として2020年ごろ木工の仕事をスタートしました。背景には、障がいのある息子さんの働く場所をみつけるのが簡単ではないという現実から、障害がある人の「働く場」をつくりたいという動機がありました。さらにそれは「趣味やボランティアではなく、ビジネスとして成り立たなければ意味がない」という強い思いがありました。
組織としてより安定させるために24年に法人化。これから先も新しい人でも安定して仕事ができることを目指し、設備投資や体制づくりを進めてきた中で、重要なステップがCNC木工旋盤の導入でした。
メーカーやブランドからの依頼が増えるにつれ、「その先のお客様に説明できる品質」が求められるようになってきた、という話も印象的でした。
一定の精度、一定の形状、そして再現性。これらを安定して提供するためには、設備としての裏付けが必要だったのです。
CNC木工旋盤はその必要不可欠な生産設備でした。“会社の体制を変えるための設備投資”という位置づけだったわけです。
立ち上げと運用|短期間で現場に定着した導入プロセス
正直に言うと、私たちは「最初は慣れるまで少し時間がかかるかな」と思っていました。新しい機械を理解し、生産工程に組み込んでいくには時間がかかります。まさにツバキラボがそうだったからです。
ところが、実際に再訪したとき、すでに現場ではかなりの量を削り込んでいて、正直驚かされました。
竹内さんは笑いながら、「実は、導入前にCNC木工旋盤が入ること前提の案件を抱えていたんです。こういう機械が入るからそれまで待っていてほしい、とお客さんに伝えていました」。
補助金が通らなかったらどうしてたんでしょうね、と笑いながらも、「導入されてからはみんな必死でした。早く使えるようにならないと待ってもらった意味がない」と話してくれました。
職人の感が生きるデジタルだけどアナログな機械
導入してみて、もう一つ大きかったのが、このCNC木工旋盤が「職人の感覚に寄り添う道具」だったという点です。
一般的にCNCというと、「すべてがデータで管理されていて、現場の感覚は入り込む余地がない」というイメージを持たれがちです。実際、現場でも「全部がデジタルになってしまうと、ちょっと身構えてしまう」という声は少なくありません。

ところが実際に使ってみると、この機械は、まず削ってみて、測ってみて、「もう少しだけ詰めたいな」という感覚を、そのまま調整に反映できる余地が残されています。
「ちょっと叩いて微調整する」「一度削ってから様子を見る」といった、これまで職人さんたちが当たり前にやってきたアナログな試行錯誤の延長線上で使えるのです。
紬葵さんの現場でも、
「いきなり完璧なデータを作り込む」のではなく、
「まず削ってみる → ノギスで測る → もう少しだけ詰める → それをデータに反映する」
という、まさに職人仕事の延長のような使い方が自然に定着していました。
結果として、現場のメンバーも「機械に合わせる」のではなく、自分たちの感覚を起点にしてCNCを使うことができています。機械の動きのクセを把握し、それをデータに反映して欠点を乗り越えた、ということもあったそうです。
この“職人の感覚を置き去りにしない”という点は、カタログスペックだけでは伝わりにくく、導入して初めて実感できるメリットだと思います。
短期で現場に定着できた2つの事実
紬葵様へのインタビューで理解できたのは、「定着に向けての体制」と「とにかくやってみるという姿勢」の2つが短期間で生産現場に定着した理由だということです。
もちろん、みながみなCNC木工旋盤を理解するための勉強は欠かせません。しかし、CADCAMの操作を覚えてデータをつくる人、現場でCNC木工旋盤をとにかく動かし試行錯誤する人と役割分担し、そこの連携がスムーズだったことで定着が早まったんだと思います。
そして、印象的だったのは「とにかくやって・・・」というトライ&エラーで試行錯誤を何度も繰り返したことでした。紬葵様とのLINEではCNCの質問がたくさん送られてきます。それはそれだけ機械に向き合っているということの証です。
小さな工房では人もおらず、通常の仕事を回すので精一杯というところも多いと思います。一人がすべてを学ばなければいけないという現実もあるかと思います。しかし、1人でも2人でも一緒に働く仲間がいるのであれば、分担して一緒にあれこれ試みることで、定着を早めることができるのではないかと、紬葵様の事例をお聞きして改めて感じました。

導入効果|作業人数2.5人分→1人に削減、生産性向上と品質の安定を実現
導入効果として、まず分かりやすいのが作業効率の改善です。
工場長の横川さんは、現場の実感をこう表現していました。
「体感的には、2.5人分ぐらいかかっていた作業が、1人で回せるようになった感じですね」
しかし、効果はそれだけではありません。
もう一つ大きいのが、品質の安定です。
手加工の場合、どうしてもその日の体調や感覚によって、微妙な差が出てしまいます。その時の気分で形が変わってしまうこともあります。CNC木工旋盤を使うことで、一度決めた形状を、ほぼ同じ精度で再現できるようになりました。
「一回形を決めてしまえば、それを同じように出せる。これが本当に大きいです。量産のときの安心感が全然違います」
これにより、これまで「言いにくかったけど、こうしてほしかった」というお客様からの品質面の要望も、データをもとに調整しやすくなり、結果として顧客とのすり合わせもスムーズになってきたそうです。さらには、納品後すぐに再オーダーをいただくということもあり、導入の効果が大きく発揮されました。
CNC木工旋盤導入後の展望|単価アップと高付加価値な木工加工へのシフト
現在は、「まずはCNC木工旋盤でしっかり実績を作る」フェーズだと竹内さんは言います。
その先には、単価の見直しや、より条件の良い仕事へのシフトも見据えています。
竹内さんは、今後についてこう語ってくれました。
「安くてもいいもの、から、ちょっと高いけどいいもの、に少しずつ移っていきたい。そのためにも、安定して作れる体制が必要なんですよね」
設備投資についても、
「1年でペイできるぐらい、しっかり回していきたいですね」
と、かなり現実的で前向きな目標を話してくださいました。
CNC木工旋盤は、単なる省力化のための機械ではなく、会社を次のステージに進めるための基礎設備として位置づけられていることがよく分かります。
まとめ|CNC木工旋盤は木工工場の属人化を解消し、量産と品質安定を支える仕組みづくり
今回のインタビューを通して強く感じたのは、CNC木工旋盤は単なる「生産性を上げる便利な機械」ではなく、木工の仕事のやり方そのものを変え、組織を強くするための「仕組みづくりの道具」だということです。
属人化からの脱却。
量産と品質安定の両立。
そして、将来に向けた事業基盤の強化。
そのために、体制を整え、みなで試行錯誤する。それが短期間で現場に定着させるコツだと感じました。
紬葵さんの事例は、「いまのやり方に限界を感じている木工事業者・工房・メーカーさん」にとって、きっと大きなヒントになるはずです。
株式会社紬葵






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