人的リソースが限られる中、自動化は必須だった
ツバキラボがCNC木工旋盤を導入したのは2023年秋。
そこから遡ること半年、400個のスープボウルを納品していました。400個のスープボウルを一つ一つ一人の職人が木工旋盤で削り出し、サンディングして仕上げていました。日に日に積み上げられるボウルを見て頼もしく思う一方で、同じ注文が来たときには、今と同じことはさせられない、と考えていました。この仕事は定期的に発注を受けることが決まっていたからです。人海戦術でこなすこともできるが、他の仕事を止めることになります。機械による自動化は必須な状況でした。
やっと見つけたCNC木工旋盤
それから木工旋盤加工をいかに自動化すべきか、さまざまな方法をリサーチしました。その中でプログラムで動くCNC木工旋盤というものが世の中に存在するということを知り、早速探し始めました。しかし、国内で販売されているものは、加工スピードも遅く、価格も手に届くものではありませんでした。
そこで、海外を調べるとヨーロッパにいくつかCNC旋盤を作っているメーカーがありましたが、価格も高く、輸入するにしてもその手続きや電源のことなどを考えるとハードルが高く断念しました。そこで、台湾の木工機械メーカーを訪ねたり木工機械展示会などに行き情報を探しましたがなかなか見つかりません。
最終的に見つけたのは中国。そのメーカーに早速連絡を取り、実機を見るために中国へ渡りました。そこで加工の様子を見たり、プログラムデータの作り方を見たりしました。まさに私たちのニーズにかなう機械がそこにあったわけです。そして、私たちの仕事に合うようにカスタムを依頼した上で、ついに発注に至ります。
輸入した機械はどうやったら動くのか
2023年7月に発注した機械は8月下旬に届きました。しかし、ここからが大変でした。そもそも機械に電源コードもなく、ここから自分たちでやらなきゃいけないのか、とまずは電気配線工事から始まります。そしてマニュアルと呼べるものがなく、どうやったら動くのか、どうやったら加工できるのか全く分からなかったのです。幸い現地メーカーのスタッフとは打ち解け、メッセンジャーアプリで気軽にやり取りできる仲でした。チャット上であれこれやり取りしながら、時には中国人の友人に通訳として来てもらいビデオ通話で会話をしながら、少しずつ機械に対する理解を深めていきました。
初めてお椀ができたとき、初めて穴あけができたとき、初めてオートフィードで木工品が次々と削られる様を見たとき、木工旋盤ではできない加工がこの機械ならできる、木工旋盤で時間がかかっていた加工もこの機械なら短時間でできる、そんなワクワクした気持ちがどんどん高まっていったことを記憶しています。
驚くほど簡単なデータ作成
そして、なんといってもGコードを生成するソフトウェアが素晴らしく、このソフトがなければ買うことを躊躇していたかもしれないくらい価値のあるものでした。Gコード生成ソフトは、削りたいものの断面図をJpegなど2次元画像データにしたものを読み込ませて、パラメータを入力すれば、その形を削るGコードが生成されます。3D CADでないとCNC旋盤の加工データは作れないと思っていたので、衝撃的でした。
CADやCAMを熟知したスタッフでなくとも、扱えるそのハードルの低さは素晴らしいポイントの一つです。
3倍以上の生産性を実現
いくつか少量生産の仕事で慣れていき、そしてあのCNC木工旋盤を求めるきっかけになった400個のボウルの生産時期になりました。しかも今回は400個ではなく500個に増えていました。
CNC木工旋盤で削ることで、いくつ削っても全く同じ寸法でできる安心感は絶大です。しかも、機械の操作を覚えれば熟練職人ではなくてもだれでも扱えます。
結果一つ20分ほどかかっていたボウルの加工が、7分で終わりました。時間にして1/3です。そのあとの仕上げの作業など並行して進めることで、それ以上の生産性を実現することができたと考えています。
少量多品種生産の対応が楽に
CNC木工旋盤を導入してもう一つ良かったポイントは、少量多品種生産の対応が楽になった点です。弊社の仕事では数百単位のオーダーよりも数十個単位の少量のオーダーが定期的にあります。在庫を抱えるのも避けたいので、作り置きもほどほどにしたい。しかし、制作する職人からすれば都度対応すると前後の段取りで手間がかかってしまい、気持ちも乗りにくいなど問題もあります。そこにCNC木工旋盤であれば、プログラムを作っておき、あとは材料を用意すれば生産ができる、しかも職人じゃなくても全く同じ形で削り出すことができるようになります。職人でなくても機械の操作さえ習得すれば、誰でも生産できることの恩恵は計り知れず、経営的に非常に助かっています。
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