トップクオリティの木工旋盤を生むオーストラリアのVicmarc

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

ブリスベン。オーストラリア 第3位のこの都市の郊外に40年以上にわたり世界トップクラスの木工旋盤機を造るメーカーがあります。その名を Vicmarc 。イタリアンブルーをまとったその機械は世界中のウッドターナーの憧れであり、そして信頼できる相棒です。どのようにVicmarcが生まれたのか、どう世界トップクラスの木工旋盤メーカーになっていったのか。今回は、最新鋭のマシンが動く工場の様子を紹介しながら、そのVicmarcを深堀りしたいと思います。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

冒頭に触れたようにブリスベンは、人口約260万人のオーストラリア第3位の都市であり、市街地は中央を流れるブリスベンリバーをまたぐように形成されています。デザインに凝った高層建築と川辺の公園と遊歩道、そして橋。昼も夜もその町の美しさに惚れ惚れするような、そんな街です。ヨーロッパ、アジア、中近東からの移民も多く、非常に多国籍のため、独特な空気感があります。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

Vicmarcの工場はそのブリスベン市街地からRedcliff行きの電車にのり約1時間。終点のKippa-Ring駅まで向かいます。事前に到着時間を伝えていたので、現社長のMarco(マルコ)が駅まで迎えに来てくれました。Kippa-Ring駅から車で10分。工業地帯の一角にVicmarcはありました。

イタリア移民が生んだVicmarc

Vicmarcは、1984年に創業された老舗の木工旋盤専業メーカーです。創設者でありエンジニアのVictor(ビクター)はイタリアからの移民です。そのため、Vicmarcの機械はそのルーツを示すイタリアンブルーなのです。イタリアからスイスへ、そしてニュージーランド、最後にたどり着いたのがオーストラリアでした。世界大戦後のイタリアは不況で仕事がなかったため、スイスに行き、高精度の時計を作る機械メーカーに勤め、エンジニアとしてキャリアをスタートさせます。ヨーロッパは多言語で、イタリア語ができるVictorは重宝されます。話せる言語が多ければ稼ぎも多くなる。そこで英語を学ぶために奥さんとニュージーランドへ移りました。居心地が良いニュージーランドに長期滞在することになり、そこで家具を自作するために機械まで自作するようになります。いつかこれを仕事にできるのではないかと考え、市場がより大きいオーストラリアへ移住。さまざまな仕事を掛け持ちしながら、独立に向けて準備を始めました。たまたま木工旋盤にニーズがあることを知り、Victorは世界に誇れる木工旋盤を作ることを決意し、ついに会社を興したのです。そして自身の名前と息子 Marcoの名前と合わせ、社名をVicmarcと名付けます。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

古き良き工作機械と最先端の工作機械

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

Vicmarcの工場には新旧様々な工作機械が置いてあります。80年代のものだと紹介してくれたのは丸福鉄工所の平面研削盤。平面出し、穴あけなど正確にこなし、ほとんど故障もないそうです。覚えている限り10年ほど前にワイヤーが劣化したのを取り替えただけとのこと。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

そのそばには、生産中で塗装前のVL240がずらりと並んでいました。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

一方で、最新鋭のMazakの複合加工機が動いています。訪れたこの日に加工していたのはチャックインサート。トレーに乗せられた材料が一つずつロボットアームによって機械内部に取り付けられ、外側/内側の切削工程を経て、機械から取り外され、再び元のトレーに戻ってきます。これら全てが全自動で動いています。Mazakのマシニングセンターは全部で3台。Vicmarcのハイクオリティなプロダクトは世界トップクラスの工作機械で生み出されていました。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

良い機械は良いものをつくる。シンプルな法則です。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

Vicmarcは高精度のチャックメーカーとしても有名です。これはまだ木工旋盤用のスクロールチャックがそこまで普及していなかった時代、精密に加工された実用的なスクロールチャックを創業者であるVictorは世界に普及させました。精密加工されたチャックを組立て、ひとつひとつ丁寧に梱包しています。

Vicmarcの改善魂

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

創業期のVictorの働きぶりを幼いころから見てきたMarcoが、同じエンジニアの道を歩むことは必然でした。幼くしてCNCを操るようになり、生粋のエンジニアに育っていきます。

そして常により良くできないか、そう考えているそうです。例えば、VL150についてはクイルを勢いよく戻しすぎるとガチっと固まってしまうことがあります。ツバキラボでもよくこの現象がおき、大変困っていました。しかりマルコはこの解決策を見出します。「とっても簡単なことだったんだ」とテールストックからクイルを取り外し、ナイロンワッシャーを取り付けた後、また取り付けなおしました。たったこれだけのことだったんだよ、ともう固まってしまうことがないクイルを操作しながら説明してくれました。またクイルがカタカタ動いてしまうのも解決済み。

Vicmarcは数年前にVL150はバージョン2にアップグレードしました。そのバージョン2もさらに進化を遂げようとしていました。(日本ではこれまでの代理店の希望で旧バージョンの販売を続けてきていました)。

いずれこの進化版VL150を含め、ツバキラボとしては、今後VL240やVL300といった大型モデルも取り扱いを始めたいと考えています。

木工旋盤 メーカー Vicmarc ヴィックマーク

今回は、オーストラリア ブリスベンにあるVicmarcを訪問しました。世界トップクラスの木工旋盤メーカーは、古き良き機械と最新鋭の機械両方を使い、常により良いものづくりを目指す会社でした。最後に現社長のマルコとその息子のアレックスと記念写真を撮影しました。