5月23日(金)~26日(日)の3日間にかけてAAW Intenational Woodtuning Symposiumがアメリカ オレゴン州のポートランドにて開催されました。このイベントにツバキラボのスタッフみんなで参加してきましたので、そのレポートをお届けしたいと思います。
AAW International Woodturning Symposiumとは?
AAWとは、American Association of Woodturningの略で、主にアメリカを中心とした木工旋盤協会です。このAAWが毎年開催するのがこのAAW International Woodturning Symposiumで、ここには世界の著名なアーティストらが参加者に惜しみなく技術を伝授するセッションが3日間通して行われ、さらには木工旋盤やツールのメーカーの展示即売会、作品の展示会・オークション、交流会などなど木工旋盤ユーザーなら興奮を抑えられないイベントです。
今年は、アメリカのおしゃれな街の代表格オレゴン州のポートランドで開催ということで、これまた激アツなわけで、ポートランドと木工旋盤の祭典と2つを思う存分楽しむことができました。

会場は、Oregon Convention Center(オレゴン国際会議場)です。こんな立派な会場で木工のイベントが開催されるというのは日本ではなかなかないですね。

事前参加登録をしてあるので、登録者のアルファベット別の窓口で受付を行い、ネームタグとハンドアウト(写真↓分厚い冊子)を受け取ります。ネームタグには、名前だけでなく出身地も書いてあります。また初めて参加する人には「First Attendee」というラベルがついていたり、デモをする作家さんには「Demonstrator」というラベルが付いていたり。こういうのは、初対面の人でも会話のきっかけを生んだりするのでいいですね。

ハンドアウトには、全体のスケジュールやマップだけでなく、

デモンストレーターの紹介や各セッションの紹介、技術的な解説など170ページというボリュームの情報満載な冊子です。

受付とは別に総合案内窓口もあり、何かあればここに行けばいろいろ親切に対応してもらえます。ツバキラボスタッフのうちひとりがネームタグが用意されていなかったので、こちらの窓口で対応していただけました。ほかにも荷物を預かってほしいというリクエストも「ハイ、喜んでー!」と受けていただけました。
参加費は、3日間のフルアクセスで一般$445、AAW会員は$375と安くはありません(日本円に換算すると一般で7万円越えです(24年5月末$1=160円))。それでも数百人の参加者が集まるのだからすごいと思いますし、運営側もそれに応えるように体制を整えて実施してます。そして毎回、より参加しやすく、楽しめるように工夫が重ねられています。今回は、モバイルアプリがあり、アプリ上ですべてのデモンストレーターやセッションの概要を閲覧できたり、自分だけのスケジュールを組めたりできるようになっていました。
どれも気になる!選ぶのが大変なデモンストレーション セッション

このイベントの最大の魅力は、プロの作家たちが技術を惜しみなく披露してくれるデモンストレーションです。90分のセッションが同時に8部屋で開催され、それが1日4回。最終日は午前中で終わるので、8x4x2.5の合計80ものデモセッションが行われるのです。

↑これがハンドアウトに掲載されているスケジュール表
「Bowls, Platter(ボウル、お皿)」「Boxes(蓋物)」「Embollishing(装飾)」「Finishing(仕上げ)」「Hollow Forms(ホロイーイング)」「Multiaxis(多軸)」「Pens(ペンづくり)」「Segmenting(セグメンティング)」「Spindles, Finials(スピンドル)」「Tools, Techniques(ツールと技術)」の8つカテゴリーに分かれており(スケジュール表ではカテゴリーごとに色分けされている)、ベーシックなスキルから高度なものまで様々、3日間通して自分の興味のあるもの、またはこの人のテクニックを直に見たい、というものを選びます。しかし、80もあると、とにかく大変。
海外では表現豊かな作品作りが盛んです。そのために装飾や仕上げ技法は関心が高いようです。一方で、ボウルの作り方やスピンドルといった基本技術もプロの技を見れるということもあり、多くの人が集まります。ホローイングやねじ切り、セグメンティング、多軸といった高等技術もやはり人気。このシンポジウムに参加するととにかくアメリカにおける木工旋盤のすそ野の広さを実感します。

上の写真はRolly Munro氏のホローイングのデモセッションが終了したあとに、参加者が集まり質問を投げつけているところ。こういった著名なプロの作家にでも気軽に質問できます。
また驚きなのは、プロの人たち、デモンストレーターの人たち自身が、他のセッションを見ていたり、休憩エリアで一緒に食事したり、会話したりと、プロアマ分け隔てなく交流でき、互いに学び合ったり、情報交換できる環境だということです。こういうところは海外、特にアメリカらしさを感じます。
今回は日本から田中瑛子さんがデモンストレーターとして和ろくろと漆を紹介

今回のシンポジウムでは、日本人アーティストの田中瑛子さんがデモンストレーターとして招かれており、日本の技術である「和ろくろ」と「漆」そして「伝統から現代技法、そしてアートへ」と3つのセッションがありました。
どのセッションも立ち見ができるほど人気で、海外からの日本の技術や文化に対する関心の高さを物語っています。こういうところで日本人が自ら発信することは日本を正しく評価してもらえることにつながります。
最新アイテムをチェックできるトレードショー

そして各メーカーや販売店がブースを並べるトレードショー(展示即売会)も非常に盛り上がっていました。

散策しながら新しいアイテムを探したり、気になっていたツールをチェックしたり。メーカーの人が自ら商品を説明してくれますし、その場で質問をぶつけることもできます。
うろうろしていると、意外と「こんなアイテムがあるんだ」と発見があったりして面白いです。
自分の作品も展示・販売できるギャラリー&オークション

会場内にはギャラリーもあります。ここではさまざまなレベルで作品が展示してあるのですが、面白いのはインスタントギャラリーといって参加者誰でも作品を並べることができ、自分で値付けして販売することもできるのです。これもこのシンポジウムの醍醐味のひとつ。
著名な作家も出品していて、その作品をまじかに見られるのもいいところです。

日本でもホローイングツールで有名なニュージーランドのRolly Munro氏

イスラエルの作家 Eli Avisera氏

和ろくろや漆の伝統技法を現代アートとして昇華させた田中瑛子氏の作品

地元オレゴン州ポートランドのKevin Jesequel氏のホローイング作品。Fingertips Openingといって指の太さぐらいの開口部しかないホローイングです。
作品によっては、ライブオークション等で販売されたりします。
こどもたちも木工旋盤に挑戦
このシンポジウムのユニークで面白いと思うところは、ユースプログラムがあって、子どもたちが木工旋盤体験ができるのです。しかもプロのウッドターナーが直に教えてくれ、無料で参加できます(10歳以上)。今回、子どもたちも一緒に来ていたので、このユースプログラムに参加してみました。

参加したのは、ペンづくり、シンプルなけん玉(ボール&カップゲーム)づくり、リンゴ型メモスタンドづくりの3つ。子どもにとっては貴重な体験だったようですし、アメリカ人の子どもたちにとっても旋盤の体験は新鮮で楽しいものだったようです。
Turners without Borders Meeting
このシンポジウムの中には、サブセッションのようなプログラムもあります。そのうちのひとつ「Turners without Borders」というものがあり、簡単に言うと”国境なきウッドターナーの集まり”で、各国から集まった人たちが集い、それぞれの国の木工旋盤の状況やそれぞれの活動を紹介するというミーティングです。ツバキラボの和田はこのミーティングに参加して、日本でも旋盤ユーザーが増えていることや、海外のウッドターナーをお呼びして交流するような活動をしたいということをお話しさせていただきました。少しずつ、その土台作りを進めていけるといいなと思います。
まとめ
以上、AAW Intenational Woodtuning Symposium in Portlandのレポートでした。今回のシンポジウムでは日本からのデモンストレーターとして田中瑛子さんが招聘され、和ろくろや漆の紹介セッションがあったことは特筆すべきことでした。
またこのようなプロアマ関係なく学び合う場というのは、いつか日本国内でも実現できるといいな、と思います。